7月3日第12回3期生ゼミ記録(松田)

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こんにちは。3期生の松田です。

私が今回発表した本は、中室牧子さんが書いた『「学力」の経済学』という本です。この本は、教育経済学者である中室さんがデータにより教育を分析しています。どのような教育が成功する子どもを育てるのかということを誰かの成功体験や主観に基づく逸話でなく、科学的根拠に基づいて述べられた本です。

発表では2つのことについて紹介をしました。

1つ目は「因果関係を明らかにする」ということです。文部科学省が全国学力・学力調査の結果を用いて、子どもの学力と家庭環境にどのような関係がみられるかを分析しました。その分析は「親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書をしている」というものです。そしてこの分析に対しメディアは「学力が高い子どもの特徴は読書をしている」と報道しました。本にはこの報道が正しいのかどうかという問いがありました。結論は誤っており、その理由は因果関係が明らかにされていないこととされていました。経済学では2つのできごとの関係を示すときには因果関係を明らかにすることが必要であるとされ、この報道には因果関係がないので誤った情報であるということになります。

2つのできごとを説明するときに用いられるのは因果関係と相関関係です。そもそも因果関係とは「Aという原因によってBという結果が生じた」という原因と結果のことであり、相関関係とは「AとBが同時に起こっている」という事実でのことです。このメディアの報道で表すと、因果関係は「読書をしているからから子どもの学力が高い」と表され、相関関係は「学力の高い子どもが読書をしている」と表されます。ここでの問題は「学力の高い子が読書をしている」ということを「読書をすれば頭がよくなる」とはき違えるところにあります。このはき違いによって親が子どもに本を買い与えたり本を読むように指導したりしても無駄になる可能性があります。よって因果関係を明らかかにすることが重要であるということです。

2つ目は子どもに勉強をさせるために「子どもをご褒美で釣ってはいけないのか」についてです。

私自身、ご褒美のためにテスト勉強をしていたので、ご褒美で釣ることは良いと思いました。科学的に基づいた結論としてもご褒美で釣ることは良いとありました。人間には、遠い将来のことであれば冷静に判断できるが、目先の近い将来のことはすぐに得られる満足を大切にするという性質があります。この性質を簡単に説明すると「将来のことを思えば今勉強をしておかなければならないことは分かっているが、目先の遊びや楽しいことを優先してしまう」ということです。この性質を利用して「今勉強をすること」の利益や満足を高めるためにすぐに得られるご褒美を設定することは良いということです。

しかし、勉強をしてほしいという度ごとにご褒美で釣ることはどうなのかという意見が出ました。発表中に答えを伝えることができなかったので、ここで説明します。この本にはどのくらいの頻度でご褒美を与えるのか、近い将来というのはどのくらいのことを指すのかということについての記述はなかったので、ご褒美で釣ることについて私の考えを述べます。私自身、中学まではご褒美のために勉強をしていたところがあります。でもご褒美のためにいつ何をどう勉強するのかは自分で考えてやっていました。先に述べた「今勉強することの利益や満足を高めるため」という部分を私の経験に当てはめると、利益や満足はテストで良い点が取れることとそれによってご褒美がもらえることになります。その利益や満足を得るために、今しなければならない勉強を先送りせずに取り組もうとする子どもの意識を高めるためのご褒美という考えを持てば、ご褒美で釣ることに意味を感じることができるのではないかと考えました。


本の内容をただ伝えるのではなく、聞き手のことを意識し内容をかみ砕いて発表をすることがいかに難しいことかということを毎回痛感しています。今回の発表では内容をかみ砕く前に、内容の理解が乏しかったと感じています。次回はこの本の後半部分の内容を発表するので、今回の発表で学んだこと、感じたことを意識して取り組みたいと思います。(松田)

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