一年間を振り返って(牧野紘)

 小学生のころからの夢であった教師になって、もうすぐ一年が経とうとしている。あっという間の一年間であった。この一年間を振り返ってみると、本当にいろんなことがあった。自分が一年目で何も分からないとしても、子どもから見たら先生。この責任の重さを知った。子どもたちは待ってはくれない。毎日元気に登校してくる子どもたちのために、がむしゃらに進む日々が続いていた。
 そんな日々を思い出していると、一人一人の子どもたちの顔が浮かんでくる。
 『苦手なことがある日は学校に来るのを嫌がる時もあったあの子』は、今では嫌がることもなくなり、元気に学校に来ている。一学期の振り返りでは、不器用な字で「先生の笑顔がいい。」と書いてくれて本当に嬉しかった。
 『自分の気持ちが押さえられず、友だちと喧嘩になったり、反抗的になったりしていたあの子』は、まだ喧嘩はするけれど、きちんとごめんねと言えるようになった。私の話を聴くとき、目をしっかり見てくれる。
 『スピーチや発言をしようとすると、涙が出てきてしまうあの子』は、学期初めの目標に、もっと発言できるようになりたいと書き、少しずつ手を挙げる回数が増えるようになった。授業の振り返りには、発言できて嬉しかったと書く日も出てきた。スピーチがある日は、事前に考えてきてメモを用意していた。まだ小さな声だが、それを聴こうとするクラスのみんなの雰囲気が嬉しい。
 『ノートに落書きばかりしていたあの子』は、まだ授業中に落書きをすることもある。けれど、きちんとノートもとっている。濃くて力強い字で。漢字のノートの宿題を見ると、格段に字が上手くなっている。絵日記の分量も増えた。保護者の方からは、「最近少しずつ勉強が楽しくなっているみたいです。」と話していただいた。私だけじゃなくて、お家の人と子どもの成長を共有できたことが本当に嬉しかった。
 『長縄の集団跳びが一回も跳べなかったあの子』は、三回連続で跳べるようになった。正直言うと私は諦めようとしていた。しかし、子どもたちは諦めなかった。その子本人も練習を続けたし、周りの子が一緒に手をつないで跳んだり、声を出したりしてくれた。三回跳べた時は奇跡だと思ったし、泣きそうなくらい嬉しかった。
 それに比べて自分はどうか。この一年間で成長できただろうか。そう考えると自信がない。子どもたちの方がたくさん成長している。自分ももっと頑張らないといけない。そう思えるのは子どもたちのおかげである。この子たちと共に過ごすことができるのはあと少しだが、子どもの成長に食らいついていく自分でありたいと思う。(牧野紘)

※写真は2017年2月19日「愛される学校づくりフォーラム」での牧野紘子さん

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