できない理由を探すことより、できることから始めましょう(大西)

今回の緊急事態宣言で、学校と子どもたちのつながりこれまでなかったほど分断されてしまいました。子どもたちや保護者との直接のコミュニケーション手段が制限されてしまった今、子どもたちの状況を何とかして知りたいと先生方は思っていることでしょう。学校休校でも先生方はこの状況に対応するため忙しく働き、頭を悩ませていることと思います。

学校がこのような事態に対応するために持っているリソース(資源)は限られています。そのリソースをどのように使うかが状況改善の鍵となります。
学校では平等であることを非常に重んじます。今では普通になった保護者への一斉メール配信も、「携帯を持っていない保護者がいるから全員には知らせられない」といった理由ですぐに実現しなかったことを思い出します。この他にも、「緊急なのにすぐに見ない人はどうする」「個人情報の問題でメールアドレスを教えてもらうことはまずい」といったことも実現を妨げる理由となりました。
ここで考えてほしいことは、2つあります。一つは、全員同じでなくてもそのことで大多数に大きなメリットがあれば、やるべきだということです。だからといって少数を切り捨てろということではありません。少数への対応をていねいにすればいいだけなのです。携帯を持っていない、登録を拒否する方への代替手段を講じればよいのです。
もう一つは、できない理由ではなく、そのできない理由をクリアすることを考えることです。ネガティブを見て止まってしまうのではなく、ネガティブを克服すれば前へ進めると考えるのです。メール配信をすぐに見てくれないことへは、「事前にこのような事態になったときは、メール配信で連絡します」とくり返し周知することや、ホームページや電話連絡などの代替手段を考えることです。私が開発のお手伝いをしたシステムでは、メールを読んだことを知らせてもらう機能をつけ、読んでない方には別の方法で知らせるようにしました。また、個人情報であるメールアドレスを登録するのに、学校からは登録サイトを保護者に知らせるだけにして個人情報を直接管理しないようになっています。要はできるようにするために工夫をすることなのです。

子どもたちの様子を知りたいという先生から、オンラインの会議システムを使いたいという要望をよく聞きますが、それに対して、全員を対象とできないからとそこで検討を止める学校と実現する方向で知恵を絞る学校とに分かれています。地域によって学校や保護者の状況は違いますから一概には言えませんが、オンライン会議に参加できる環境があるかを調査し、条件を満たす子どもが一定数いるので、できない子どもには学校の機器を貸与して実現している学校もあります。一方、全員と連絡できない、用紙を回収して集計が大変・・・といったことで、環境の調査すらしていない学校もあります。

子どもの課題を先生が一生懸命印刷して、子どもたちに時差出校させている学校もあります。ホームページを通じて各家庭でダウンロードしてもらい、その環境がない子どもにだけ紙で配布している学校もあります。全員同じにこだわらず、学校にある限られたリソースの一つであるホームページを有効活用しようとする姿勢があるかどうかの違いで状況は大きく変わるのです。

そしてもう一つ、こういった柔軟な対応を妨げるのは学校や先生の横並び意識です。ある学校が先陣を切って新しい対応をすると「あの学校がやっているのに何でやらないのか」といった苦情が保護者からくるので、全員で足並みをそろえようと待ったがかかる。ある先生が子どもたちへのメッセージを動画でアップしたいと言ったら、「私はできないからやってもらっては困る」と止められたりすることもあります。今は非常時です。少しでも子どもたちプラスになることを素早く実行することが求められます。そうではなく、「私たちもやりたいから教えて、手伝って」と言ってほしいのです。

アンケートをつくってオンラインで集計することができるホームページシステムもあります。全員に電話で様子を聞くことは大変ですが、こういったアンケートを使うことで、手軽に子どもたちの様子を知ることができます。連絡のない子ども、アンケートの結果が気がかりな子どもに対象を絞ってていねいに対応することができます。学校と保護者の双方向の連絡ができるシステムを使えばより緊密なコミュニケーションをとることが可能です。こういったシステムがないからできないと諦めるのではなく、少しでもそこに近づけるよう工夫して動いてほしいのです。
企業も学校を助けるためにいろいろな支援を無料で行っています。無料だと言っても使うためには準備も手間もかかります。それを乗り越えようとするかどうかの姿勢が問われているのです。

今回の事態への対応が、これからの時代に対応できる学校かどうかの試金石となります。子どもたちのために学校や先生が何をやろうとしているかを地域や保護者もみています。できることから始めましょう。
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