この事態における学び合い オンライン模擬授業その1 <栗木>

ZOOM機能を用いて、オンラインによる学び合い模擬授業の授業者役を体験させていただきました。ただし、生徒役は小中学生ではなく大人です。

ここのところ、オンライン飲み会なるものも流行し、テレビ番組でも普通にみかけるようになったオンライン会議。この1、2か月で急速に普及しました。学校が休校になり、一部地域の一部学校、あるいは学習塾等では「オンライン授業」が行われています。オンラインでどのような授業ができるのか、通常の教室で行われているような学び合いはできるのか、幾つかの課題に挑戦しました。
   
 ZOOMという機能の存在を知ったのは、授業日の約1週間前。生徒役の方々に出会った(あくまでも画面越しです)のも約5日前。ZOOMを使ったのは1日前。この短歌を用いた授業をするのは初めて。初めて尽くしの体験でした。どんな授業であったのかは、実際の授業記録を見ていただくことが一番です。一部省略しながら記します。

2020年4月8日 模擬授業 参加者19名(在宅) 授業者栗木
国語 短歌の模擬授業
「桜ばな いのちいっぱいに咲くからに 生命をかけてわが眺めたり」 岡本かの子
1 ホワイトボードに書いた歌を画面提示し、生徒にはノートに写す指示。写せたら各自で音読を繰り返す。続いて頭の中に映像を思い浮かべながら仲間の読みを聴く。ここまでは通常の授業通り。
2 「気になること気づくこと気に入ったこと」などをノートに書き込みを指示。当然だが手元が見えないので書けているかわからない。通常なら書けていない生徒や困っている生徒に声をかけるがそれができず顔の表情で判断するしかない。
3 ブレークアウトセッション(グループの人数指定やメンバー指定も可能)を用いてグループにする。気になったことがある人から声を出すように指示。グループの時に顔はとても自然。やはり少人数対話は必要。
4 全体で共有。考えが広がる。
(発言者 T:授業者 S:生徒役 小文字:個人名)
T:(全体に)戻ってきて。気になることを聞いてもらえた?自分から言えた?
S:(頷き)
T:気にあることのある人からどうぞ。
a:私たちのグループの中では、作者はもしかしたら死期を悟っているのではないかと。
S:(驚きの表情)
a:桜が一生懸命咲いているのを見て、自分も残された命を、命をかけて全うするっていう意見が出てきて。
T:その意見だしたbさんどこからそう思ったの?
b:命が二つ出ているので、二つの命を比較しているような感じかなと思ったんですけど、「生命をかけて」っていうところから死期を悟っているなって感じました。
T:(一番リアクションが大きかったc君指名)それ聞いてc君どう?
c:僕らの班ではそこまで深読みできなくって、なんで「いのち」ってひらがなと漢字(生命)で書いてあるんだろうっていうところから話していて、そこまで作者の状態とかなんでとか考えられなくって、本当にすごいなーって思いました
S(反応)
d:aさんは作者目線だって言っていたんですけど、私たちのグループでeさんは桜目線の話なんじゃないかとおっしゃっていて、すごくびっくりして。
S:すっげー。(誰が発生したかは不明)
T:ちょっと桜目線になってこの歌読んでみようか。
S:(銘々読み)
T:なんか生まれてきたことある?
f:桜の幹から桜を見ているというのにつながるのかなって。桜の幹が自分になっている花を見ている様子を歌っている。自分の前髪を見ているような感じ。
S:(みんなの顔が変わる。参ったという表情もあり)
T:誰かほーってなってるよね?それ聞いてどう?生まれてきたこと。
g:さっきのグループでhさんが言ってたんですけど、「いのちいっぱい」の方がちょっと軽めで、「生命をかけて」の方が結構一生懸命さがあって、その生命をかけてみている人間たちを、客観的に見ているみたいな、そんなイメージを感じました。

 一回目のグループの後の全体共有では、このような発言や反応が続きました。aさんはグループで聴いたbさんの考えを紹介し、それに触発されてcさんに感動が生まれ、一方でⅾさんがグループで聴いたeさんの違う新しい視点を皆に広げます。思いもよらなかった発想を謙虚に受け止めたfさんが自らの考えを深め、gさんは「見ている」という点で、前述のcさんの疑問点につなげます。それぞれの発言が羅列のようでいてつながっている、そんな様子です。

続きはその2で。
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