この事態における学び合い オンライン模擬授業その3 <栗木>

 その2では、授業後半の様子を授業記録で記しました。学びやその深まりは個人によって異なります。それを知る手立てがふり返りです。ふり返りを記録することで自分自身の変化、学びの足跡、他からの働きかけ等を再認識できます。また、それを読むことで、授業者は授業をふり返ったり、学びの成立や不成立等を確認できたりして
授業改善に生かせます。ふり返りの一部を紹介します。

<学びの天気 晴れの人のふり返り>
・eさんやfさんの話を聞いて、また別の命の見方もあると知った。命に関する考え方を自身でも捉えなおすことができた。
・eさんの”桜目線”じゃないかという話から、新たな歌の見方ができたように感じた。
・こんなにも様々な考えが生まれることは個人的には楽しかったし、意見交換をしていくことで考え方の幅を広げることが大切だと感じました。
・最終的に、桜が広く人間界を客観的にみているような場面が浮かびました。mさんの、「人間も肩の力抜いていけよ」みたいな考え方も素敵だと感じました。
・「桜目線ではないか」という意見が斬新で、目から鱗でした。歌を詠むときの頭に巡るイメージが、桜を見上げる視点から、人を見下ろす桜の視点に一気に変わって大変興味深かったです。
・aさんが「わが」は人ではなく桜の根本の生き物なのかもと考えたり、tさんの聞き手によって捉え方がかなり変わるのではという意見だったり、cさんの「死期が近い人が詠んだのかも」という考えに納得したり、他の人の意見を聞き、その意見に対する疑問を訊き、それを重ねたことで、はじめは自分では浮かばなかった映像という新しいものが生まれたことを実感し、とてもうれしく思った。
・自分には無かった見方がたくさん出てきて、それらを自分の中に落とし込むことが楽しかったです。
・はじめは作者の状況を想像することから句の意図を考えることを考えていたけれど、視点の転換の話があってから、話が広がりました。みんなの意見を聞いていくうちに自分の中で、解釈が固まっていった。
・あらかじめ「わからない」ことを聴くことを意識して取り組めたので、どうしてそういう考えが生まれたのかを聞いて話を広げることができた気がします。

<学びの天気 曇りの人のふり返り>
・もともと国語が苦手なので、話し合いでもほかの人の意見を聞いてなるほどと思ったり、発表で意外な見方が知れたりととても頭を使う授業でした。
・自分の脳みそのスカスカ感を感じ、地味にショックを受けている。
・この詩は何を伝えたかったのだろう、作者は何をイメージして作成したのだろうと考えるとモヤモヤが残る。

今回、ふり返りは「スクールライフノート」を使って記入しました。自分の学びを「晴れ」「曇り」「雨」「雷」で示すところから始まります。19名中5名が曇りで14名が晴れでした。スクールライフノートを用いれば互いのふり返りを読み合うこともできます。「〇〇さんの△△という考えで自分の考えが□□から××に変わった。」という記入が多く見られました。個人名が出てくるのは互いをリスペクトし合えているからであり、また、他の考えを謙虚に受け止めて自分の学びを深めているからでもあります。大人であっても認めてもらえたら嬉しいもの。子どもたちならその喜びは、自分への自信にもなるし、学びも楽しくなるでしょう。何よりもその教室での居場所が実感できます。そして、仲間の考えをもっともっと知りたくなって聴き上手、学び上手を育てます。また、この授業で何を考え、どう変化しどんなことが身についたのかを自分の言葉で蓄積していき、それを読み返すことで学びが定着します。通常の教室でもふり返りは欠かせませんが、今この事態だからこそ一層、オンライン上でのつながりを生む手だてになると思います。授業者の立場で見れば、ふり返りを授業改善に生かすこともできます。

その4に続きます。


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