この事態における学び合い 先生の挑戦と生徒の思い その後<栗木>

以前、一公立中学校の社会科の挑戦を紹介しました。この先生の挑戦が、全教員に広がり、学校を元気にしたということも。その学校の「今」を教えてもらいました。

1 先生達の学び合いが始まった
5月11日に課題を生徒に配布し、休校中でも新学年の学習が始まりました。プリントを配って宿題にするだけではなく、ほぼすべての教科、すべての先生が動画を作って生徒に語りかけたり、生徒から送られてきたメールをつないでまた生徒に投げかけたりしています。返ってくるメールも日々増加し、今では全校生徒約4分の1数が毎日送られてくるようになりました。もちろんメールには「ありがとう」の一言を添えて各先生が返事を書いています。また、全職員がそれを読むこともできます。職員室のあちらこちらから「この考えいいね。」「〇〇君頑張っているね。」という言葉が聞こえます。最初は動画作りに躊躇していた先生達も挑戦するようになってきました。PowerPointに音声を入れて作る先生、生の声で臨場感たっぷりに語る先生、自宅にあるソフトを用いて工夫している先生・・とその方法も様々です。先生方の隠れた特技や個性が発揮されました。お互いに見合って、「これ、どうやって作ったの?やってみるから教えて。」「こういうのもいいね。」という先生方の「学び合い」が始まりました。

2 生徒の学び方が成長した
 動画とメールでの学び合いを継続する中で、気づいたことがあります。段々と生徒の学び方が成長しているのです。メールで「○○がわからない」だけではなく、「僕は〇〇と考えたけれど、その考え方であっていますか?」と質問してくる生徒が増えました。また、仲間の疑問に応えるメールでは、「僕もこれが気になって調べてみたら△△とあって、そこから××と考えました。」とありました。家には手元にICTがあります。それを用いて調べた上で考えを伝えてくるのです。まるで、これからの学びを象徴しているかのようです。

3 今後に活きる
学校が始まっても、またいつ休校になるかわかりません。その時にこの動画が役立ちます。音楽の先生は、自分でリコーダーを吹いている様子を撮影し、楽譜と合体させて運指が見やすい動画を作成しました。体育の先生は、学校独自のストレッチ体操を実演し、ポイントを紹介して動画にしました。それらは今後一人一台PC時代になったとき、配信して家庭でも学校でも練習を促すことができます。いつも会っている先生が実演しているところがいいのです。自分でやってみるとうまくできないことを先生はやれてしまう、そこが「すごいな」って思ってもらえます。逆にいつもはキリッとしている先生が動画の中で「あ、まちがえた。」とかつぶやいているのを見れば、親近感が湧きます。そういう人間性が垣間見えることも今後に必ず活きます。

5月15日、文部科学省は、「新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について」を通知しました。そこには、「新型コロナウィルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子どもたちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要です。」とあります。学校が再開されても、今までと同じような教育活動をするわけではありません。先生も生徒も試行錯誤でしょう。でも、この学校のように手探りしながら前に進めば、必ず得るものや生まれてくるものがあります。その学校独自の「新しい学び」を創っていくのです。なんだかワクワクしませんか?先生と生徒の新たな挑戦と工夫の時がもうすぐやってきます。

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