本日は、ご多用中にもかかわらず、板橋区教育委員会教育長職務代理者・高野佐紀子様、板橋区議会議員・H様、K様をはじめとする大勢のご来賓の皆様にご臨席を賜りました。 学校を代表して、心より御礼申し上げます。
保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。 至らないところも多々あったかもしれませんが、本校教職員は、この3年間全力でお子さんの指導・支援に当たってまいりました。 本校の教育活動に対し、今日まで賜りました皆様のご理解とご協力に、厚く御礼申し上げます。
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さて、卒業生の皆さん。 私は、朝礼などこうして皆さんに話せる時間を、自分が皆さんにできる授業だと思ってきました。 黒板も教科書もない、自分の言葉だけを頼りに行う授業です。
先生方が1時間の授業のために何時間もの準備をされるように、私も拙い内容ではありましたが、毎回毎回話す時間の何倍、いえ、何十倍もの時間を、準備に費やしてきました。 そして、今日の卒業式、最後の授業で何を語ろうかと、皆さんの顔を思い浮かべながらこれまで以上に時間をかけて考えました。
中学校を卒業したら、無条件にバラ色の人生が待っている…などと、何の根拠もなく皆さんを楽観させる無責任な言葉は、授業者として口にしたくありません。 これまで多くの保護のもとに生きてきた皆さんは、明日から少しずつ、自分の力で現実を切り開いていかなければならないのですから。
と、そんなことを考えた時、このあと全校合唱で皆さんの歌う式歌『あなたへ〜旅立ちに寄せるメッセージ〜』の歌詞が私の脳裏をよぎりました。 ご来賓・保護者の皆様には、本日配布いたしました資料の中に同封してございますので、よろしければご覧ください。
この曲の歌詞には、まさに人生の現実を突きつける重々しい言葉がたくさん出てきます。 改めて思い浮かべてください。
【人生という名の迷路】 【自分を嫌いになった】 【他人を羨んだりもした】 【荒んだ心】 【張り裂けるような悲しみ】 【煮えたぎるような憎しみ】
どうでしょう? ネガティブな歌詞ではありますが、厳しい現実の壁に跳ね返された時、大なり小なり誰もが抱える心象風景です。
そのとおり、現実は決して甘くありません。 成功や勝利より、失敗や挫折のほうが多いという現実。 自分の思いどおりになることなど、実はほとんどないという現実。 これから先皆さんは、そういう現実の中を生きていくことになります。
だからこそ私は、この最後の授業で、皆さんに心を込めて贈りたい言葉があるのです。
「頑張れ」
頑張れ…?なんだ、そんなありきたりな言葉かと思ったかもしれません。
「頑張れ」
そう、ありきたりな言葉かもしれませんが、これから先どんなに厳しい現実が待っていようとも、この言葉を皆さんに投げかけ、励ましてくれる人がいることを、忘れてほしくないのです。 その声援を心で感じ、現実を乗り切る力に変えていってほしいのです。
事実、皆さんは今まで、そうして生きてきたのですよ。
思えば皆さんは、生まれてから今日まで、どれだけ多くの「頑張れ」に支えられてきたでしょうか。
その声援は、必ずしも耳に聞こえるものだったとは限りません。時には、あえて厳しい別の言葉や、行動で表した「頑張れ」もあったことでしょう。 時には、ぐっと言葉を呑み込み、黙って見守ることで伝えようとしていた「頑張れ」だったかもしれません。
いずれにせよ、
幼かった皆さんが、熱にうなされているとき…
友達とケンカして、泣いて帰ってきたとき…
思春期を迎えた皆さんが、人間関係で悩んでいるとき…
孤独に耐えながら、一人机に向かっているとき…
選択した進路に対する不安に、押しつぶされそうになったとき…
そんな皆さんを支えてくれたたくさんの「頑張れ」が、きっと身近にあったはずです。 さあ、今日まで声援を送ってくれた人たちの顔を、今、感謝の気持ちともに思い浮かべてください。
それができたならば、今度は皆さんの番です。 板三中を巣立つ今日を境に、皆さんは少しずつ、今度は誰かのために声援を送り、誰かを支えてあげられる存在になっていかなければなりません。
先ほども述べたように、これから皆さんが生きていく現実世界は、決して甘いものではありません。 しかし、その現実世界で、誰かから「頑張れ」と励まされたり、誰かのことを「頑張れ」と励ましたりしながら共に支え合って生きていくのも、私は悪くないと思っています。
「人が生きる」ということは、誰かから生かされ、誰かを生かすことなのだということを、覚えておいてください。 それが、この最後の授業で皆さんに一番伝えたい、私からのメッセージです。 『あなたへ〜旅立ちに寄せるメッセージ〜』です。
結びに、私は毎日皆さんの教室に入るのが、嬉しくてたまりませんでした。 教室や廊下で出会える皆さんの明るく屈託のない笑顔や笑い声に、私は何度も勇気づけられ、たくさんの元気をもらうことができました。
皆さんの笑顔と笑い声は、皆さんが私に送ってくれた最高の声援、最高の「頑張れ」だったのです。
私は、皆さんに出会えて、とても良かったです。 私は、皆さんに生かされてきたことに、心から感謝しています。
どうも有り難う。 そして、卒業おめでとう。
平成31年3月20日 板橋区立板橋第三中学校長 武田幸雄