今月8日、滋賀県大津市で大変痛ましい交通事故が発生しました。 まだ記憶に新しいかと思いますが、交差点で接触事故を起こした車が、はずみで信号待ちをしていた保育園児たちの列に突っ込み、2歳の園児2人が命を落としたという事故です。
先月19日には、都内池袋の道路を自転車で横断していた母子が、暴走してきた車にはねられ、やはり2人とも亡くなりました。 犠牲になった女の子は、3歳でした。
この2つの事故には恐ろしい共通点が一つあります。 それは「被害者に過失(落ち度)は無い」ということです。
大津の事故では、園児たちは交差点の信号が青に変わるのを、保育士さんと一緒に歩道で待っていました。 また、池袋の事故では、亡くなった母子は青信号で横断歩道を渡っているときに、車にはねられてしまったのです。
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かつて「交通戦争」という言葉がありました。
昭和30年代、日本が高度経済成長期に入ったのと時を同じくして、自動車の数も急増しました。 一方で、歩道や信号機の整備はそれに追いつかず、交通事故による死者数は年々増加の一途をたどります。 そして、今から60年前の昭和34年(1959年)、初めて交通事故による年間の死者数が1万人を超えたのでした。
明治時代に日本が当時の中国と行った日清戦争での死者数も、約1万人と言われています。 このことから、交通事故による死者数の急激な増加を一種の戦争状態にたとえ、「交通戦争」という言葉が作り出されたのだそうです。
さて、私は今回の2つの交通事故報道に接し、60年の時を経て、また新たな「交通戦争」の時代に入ったのではないかという危惧を抱きました。 ただし、それは、60年前のように死者数の増加が理由ではありません。
何の罪も落ち度もない、そして、無力な子どもが犠牲になってしまうということに、本当の戦争との共通点を見出すからです。
皆さんも「自分は中学生だから、大丈夫」などと思わないでください。 交通ルールを守っていても、「事故は、突然向こうからやってくる」という危機感を持たなければなりません。
青信号で道路を渡る時も、信号のない道路と同じように左右を確認してから横断しましょう。 もし、そこが交差点であれば、曲がってくる車の運転手さんの様子を注視してください。 そして、運転手さんが自分たち歩行者の存在を意識しているかどうかを確認してから、渡るようにしましょう。
また、赤信号で待っている間も、なるべく車道から離れた場所で車の流れに気を配り、万が一の時にも対応できるようにしておいてください。
そして、もう一つ。 とても大事なことを言っておきます。 それは、皆さん自身が「交通戦争」の加害者になってはいけないということです。
皆さんが乗っている自転車は、道路交通法という法律では「軽車両」に位置づけられています。 つまり「車のなかま」なのです。 したがって、自転車で誰かを傷つけたり、最悪の場合死に至らしめるような事故を起こせば、大津や池袋の交通事故と同じように罪に問われ、賠償責任も生じます。
もし、やむを得ず自転車で歩道を走る際には【歩行者優先】という大原則の下【すぐに止まれるスピードで走る】【2人乗りや、友達と横に並んでの並走はしない】【スマホや飲み物、傘を片手に持って運転しない】といったルールは絶対に守りましょう。
そのルールは、誰かを「過失なき被害者」にしないルールであると同時に、皆さんを加害者にしないルールでもあります。 戦争は、被害者・加害者の双方を不幸にするということを覚えておいてください。