皆さんはイソップ童話や「♪ もしもしカメよ…」の童謡で知られる『ウサギとカメ』の話を知っていますね。足の速いウサギと遅いカメが競走し、最後はカメが勝つというお話でした。

　皆さんに尋ねますが、なぜ足の速いウサギはカメに負けたのでしょうか。　自分の力を過信して、居眠りをしてしまったから？　カメのことを馬鹿にして、油断してしまったから…？　いずれも正解です。

　では、質問の仕方を変えます。　なぜ足の遅いカメはウサギに勝てたのでしょうか。　最後まであきらめずに、ゴールを目指したから…、地道にこつこつと努力を積み重ねたから…と、答え方が変わると思います。

　以上のことを踏まえて、改めて考えてみてください。　なぜ足の速いウサギはカメに負け、足の遅いカメはウサギに勝つことができたのでしょうか…？　私は、次のように言えるのではないかと思います。

　「ウサギは常に競走相手であるカメを見ていたが、カメはゴールである山の麓（ふもと）だけを見ていたから」

　自分以外の誰かの存在を気にしたり、その誰かと自分との比較にとらわれたりすることが、油断や焦りにつながる。　そして、自分の力を発揮できずに終わってしまう…。　これがウサギの走り方だと言えるでしょう。

　それに対して、ただ自分が目指すゴールのみを見据え、今自分がやるべきことに集中して取り組む。　自分と誰かとの比較ではなく、今自分にできることに全力を尽くす…。　これがカメの走り方だと言えます。

　私は、授業において必要とされるのは、「ウサギのスピード」ではなく「カメの走り方」だと思っています。

　現在板三中では、毎時間、どの授業でも、先生方は必ずその授業の「めあて」を明記してくださっています。

　そして、その「めあて」には、授業で皆さんに「わかってもらいたいこと・出来るようになってほしいこと」が書かれていいます。　それこそが、皆さんが授業で目指すゴールです。

　カメが、ゴールである山の麓のみを見据え、一歩一歩前に進んでいったように、皆さんもそれが「わかる・出来る」ようになることだけを考えて、授業に集中してください。　ウサギのように誰かとスピードを競う必要は、一切ありません。

　そして、もし１時間の授業ではゴールにたどり着けなかった、つまり、授業の「めあて」を達成できなかったというのであれば、その原因をきちんと分析してください。　先生方はそのための「振り返り」の時間も、確保してくださっているはずです。

　自分に集中力が欠けていたから、先生の説明が不十分だったから、授業の持ち物を忘れたから、前の授業で出された課題をやってこなかったから…。　理由は、教科や授業によりさまざまだと思います。

　ただし、原因さえはっきりすれば、具体的な改善策を打ち出せます。　板三中の先生方は、原因に応じた改善策のノウハウをもっていらっしゃるので、どうか先生方を頼ってください。

　つまらない仮定の話ですが、もしウサギがカメに敗れた競走を振り返り、その原因を明らかにし、「油断せずに山の麓だけを目指して走る」という改善策をもってレースに臨めば、次は絶対に負けないと思います。

　授業中は常に「めあて」を意識して学習に集中し、最後に必ず「振り返り」を行ってください。　そして、次の授業に向け改善策を打ち出すことで、「わかること・出来ること」は確実に増えていくでしょう。