【読後感想】子どもの心を前向きに動かすとは(澤本)

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 はじめて教育新書を手に取った。岩下修の『AさせたいならBと言え』という本である。内容はタイトルの通り「AさせたいならA」と直接的に伝えるのではなく、「AさせたいならB」と間接的に伝えることで1.子ども達を知的に動かすことができる 2.子ども達は知的に動くようになる この原則は集団においても個人においても有効的に使うことができる。本書では日常・学校・行事における「AさせたいならBと言え」の事例を多く取り上げていた。その数なんと93。どの事例もわかりやすく明日からでも使うことができる。

 この原則において重要なことはBをどのように伝えるかである。子ども達全員が共通認識でき、全員が理解できる言葉を使う必要がある。本書では『ゆれのないモノ』と表現していた。具体的には「物・人・場所・数・音・色」の六つに分けることができる。

 「物」では、時間が経過してもゆれることなく同一の像としてそこにあるか、クラス四十人のどの子の頭の中に入っても同一の像としてそこにあるか、ということが重要となってくる。また、現場にある物や意外性のある物を示すと印象に残りやすい。
 
 「人」とは、学校現場ではとりわけ先生や友達を示すとわかりやすい。児童にとって先生・友達はゆれることのないものであり、アクションを起こすことでフィードバックが返ってくる。この点において「人」は効果的に働くのだ。
 
 「場所」とは、多くの人が共通認識をすることのできるゆれることのないモノである。
ここでは「○の〇の〇」という公文が使用されていた。作文を書く時のテーマを絞る際に有効である。「大仏殿の大仏の手のひら」「緑のながめが美しい清水の舞台」などテーマが絞られているため作文を書く作業が知的になるのである。
 
 「数」とは、同じ年齢の子ども達ならほとんど共通のイメージとして浮かぶ無機的な存在である。「十個書きなさい」「一マスを五回ずつふきなさい」など数を利用した指示・指導法は多く活用することができる。
 
 「音」では、音を出す、音を聞く、音を立てないと三つのパターンを示すことができる。音に着目させることで無意識的に集中させたり、活動をさせたりすることができる。また、オノマトペを用いて感覚的に指示・指導することができるのだ。
 
 「色」も子どもに共通のイメージを浮上させることができる。色の特徴としては、マンネリ化しないことである。空の色、木の色などをその日、季節によって色が変化する。それに伴い言い方を変化させることで「AさせたいならA‘」になってしまうことを防ぐことができるのだ。


 私はこの原則についてBの言葉を変えていく必要があると考えた。例えば、話を聞いている人の方を向かせるために「おへそを向けなさい」と言う。これは「AさせたいならBといえ」の原則に沿っている。話を聞いてほしいから顔を向けなさいというのではなく、おへそを使うことで子どもは普段と違うことに面白さを感じてすぐに体を向けるのである。しかし、現在この言葉は鉄板の言葉になっていると感じる。多くの人がこの言葉を用いたことで一般的・機械的になってしまったのである。つまり、「AさせたいならB」と言っていたはずの言葉がいつの間にか「AさせたいならA‘」と効果が薄れてしまっているのである。この課題に対する解決策は一つである。使う人が考え、工夫することである。この原則を使うときは同じ言葉を用いるのではなく、その時・場面・人によって変えていく必要がある。

 これからの生活で何かを伝えるときは「AさせたいならBといえ」の原則を思い出したいと思う。どうしても「AさせたいならA」と言ってしまう。これではいけないことを学んだ。この原則は子どもだけでなく大人も知的に動かすことができる。常に知的に思考ができるようにこの原則を意識してこれからの学びに生かしていきたい。(澤本)
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