【拙稿紹介】全教職員を大切にする「働き方改革」

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 月刊誌「教職研修」に掲載された「全教職員を大切にする働き方改革」の原稿を消化します。

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教職員×四倍の責任を負っているよ

 このタイトルは、私が校長になったときに企業の社長から言われた言葉です。
「玉置さん、校長就任おめでとう。先生方が30人ほどおられる学校ですか。ということは、120人ほどに対して責任を負うわけですね」
 この言葉を聞いたとき、120人という数の意味がまったくわかりませんでした。私の表情でわかっていないことが伝わったのでしょう。
「校長は社長と同じ。従業員には家族があるでしょ。一人平均4人家族だとしてごらんなさい。社長は、従業員数の四倍の責任があるということですよ。その従業員が辞めるということになったら、家族の明日からの生活もどうなるかわかりませんよ」
 校長の責任の重さをつくづく感じさせられた言葉でした。最近、教師人生に挫折したり、先行きを考えず、とりあえず辞めてしまったりする方も増えてきているようです。働き甲斐がある職場づくりは重要です。
 
働き甲斐がある職場づくり

 働き甲斐がある職場とは、どのような職場でしょうか。一つには、自分はこの職場で認められ、大切にされていると感じられる職場ではないでしょうか。
 私には忘れられないことがあります。校長時代に出会ったある教員との出来事です。その教員は、他の教員と一線を引いていて、図書担当であることもあって、授業後は職員室ではなく、図書室にいることが日常となっていました。したがって、私も会話をする機会はほとんどありませんでした。
 このままではいけないと思い、授業後に図書室を訪ねてみました。机上に置かれていた通信らしきものに目がとまりました。その教員は、教科通信を発行していたのです。前時の学習内容や子どもの発言を再現し価値付ける記録、教材関連情報などが書かれた通信が、驚くことに学級ごとに発行されていたのです。
 子ども一人一人を大切にした教育実践を地道に続けておられることを知り、私は素直に感動の気持ちを伝えました。それからは教科通信が校長机に置かれるようになりました。それをもとにちょっとした会話をしたり、授業を参観したりすることも生まれました。

 夏季休業中のことです。その教員が旅行先から私宛にお土産を送ってくれました。中には、「日本一の校長先生にお会いしました」とメッセージがありました。振り返ってみると、私はその教員のよさを知り、素直に認めただけです。本当は全教職員の前で、この教員の素晴らしさを伝えたかったのですが、性格的に好まれる方ではなかったので、そっとしておきました。
 しかし、校長が教員を認めているということは伝わるものです。その教員と会話をする者が増えました。そして、その教員の実践にはますます磨きがかかりました。

働き方改革の本質を忘れない

 働き方改革の推進が提唱されるようになり、職場ではそれなりの変革がされていることと思います。
 重要なことは、働き方改革は時間短縮だけが目的ではないということです。学校での滞在時間が短くなっても、それぞれを認め合っていない集団であれば、居心地が悪く、気持ちよく働くことができない職場ではないでしょうか。
 管理職は、「我が校は、教職員が苦しいときに弱音が吐ける職場かどうか」という視点を常に持っていることです。認め合うことができているからこそ、自分の苦しいところを発露できるのです。
 学び合いの授業を推進しようとしている学校から相談を受けたことがあります。「子どもたちには、『分からないときは分からないと言いましょう』と伝えています。それができないのです」
 大人なら、なおさらです。そのためには、リーダーが率先して教職員のよさをつかみ、互いによさを認め合う集団づくりをすることです。「この職場には、元気が出る空気がありますね」と言える学校の方が、定時退校よりずっと働き方改革が進んでいると思います。
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