『 「いのちの授業」をつくる 』を読んで(下野)

 こんにちは、7期生の下野です。もうすっかり秋の香りが漂う季節となりました。彼岸花やススキ、紅葉、私は秋の景色がとても好きです。どれも落ち着くから。

 そんなある日、大学の帰りに祖母の家に教員採用試験の結果を報告に行きました。車の窓を少し開けて、秋風と田舎のゆったりとした景色を楽しみながら。祖母の家に向かうわけは、お墓参りもあります。亡くなった曾祖母は「やっと教師になる子がこの家から出た」と教育学部に入学する私をこれでもかという程褒めてくれました。私は、会ったことがありませんが、曾祖父は「数学の教師」だったそうです。同じお墓で眠る祖父もまた私が教師になることを応援してくれました。きっと祖父は、何でも応援してくれたのだろうとは思いますが、寡黙な祖父が人知れずに神社に私の教育学部への合格祈願を願っていてくれたことを私は、祖父が亡くなってから知りました。そんなご先祖様に、「私先生になるよ」と、そう伝えに行きました。

 この日は、一晩泊まって行こうと決め、カバンから玉置先生の著書を取り出します。研究室HPに沢山の記事が並ぶ、鈴木中人さんと玉置先生が共著された『 「いのちの授業」をつくる 』です。私も玉置ゼミ生として、そして、これから教職を歩む大人として拝読させて頂きました。

 「いのちの授業」。私は、教師になった時どう取り組むか。まずは、そんなことを思いました。私は、18歳の時「いのち」を投げ出そうとした人間です。「今あるいのちを精一杯生きなさい」なんて綺麗事で、「そんなことは分かっている、それでも辛いんだ」と思う人の気持ちは痛いほど分かります。そんな私にできる「いのちの授業」とは。

 本書を読み思ったことは、「いのち」を前に教師も子どもないということでした。一緒に考えれば良い。何も教えられないのです。教師が唯一子どもたちに伝えられることは、「先生=先に生まれた」人として、自分の「いのち」に対する心を正直にさらけ出すことではないでしょうか。その正直な想いに心を打たれる子どももいれば、また別の「先に生まれた」人の心になにかを感じ取る子もいる。教師も子ども同様同じ道を歩んできたわけではありませんから、子どもたちには学校という場にいるたくさんの「先に生まれた」人の「いのちに対する心」を感じ取って欲しいと思いました。

 私は、中学校実習でいじめの授業をしました。授業の最後に、私は子どもたちに自分の18歳の時の経験を話しました。教育実習生として、この子達になにか残せることはないか、「生きていれば必ず戻ってこれる」「どうか死なないで」。これが私が教育実習先で最後に残したメッセージでした。ワークシートには、子どもたちが自身をさらけ出した様々な経験が綴られていました。辛かったけれど、先生の言葉を聞いてもう少し頑張りたいと思ったよと私にメッセージをくれた子もいました。そこには、ありふれた「いじめはいけない」「いのちは大切にしなければならない」等の教師が欲しい言葉は一つも見当たりません。私は、教育実習で宝物のような経験をさせて頂いたことに、本書を読み改めて気付かされました。きっとあの授業のあの時間、私は子どもたちに何かを残せたように勝手ながら思うのです。鈴木中人さんのおっしゃられる「いのちの授業」の三つの命題の一つ「いのちを実感する。」の一つの契機であったのかなとこれも勝手ながらに思います。

 4月には、プロとして教壇に立つことになります。『 「いのちの授業」をつくる 』。本書に出逢い、私は子どもたちに一人の人としての心をさらけ出す意味を教えてもらったように思います。「いのちの授業」は難しいです。薄っぺらな言葉では、何も伝わりません。空しくなる日だってやってくるかもしれません。でも私は、自分のように子どもたちに「いのち」を軽んじてほしくない。大丈夫、だって私が今貴方たちの目の前にいる。必ず生きていれば戻ってこれる。そう伝え続けたいと思いました。

 そして、今私は子どもたちにそれを伝えられる夢の舞台のスタートラインに居ます。ひいおじいちゃんは、どんな教師だったのだろう。ひいおばあちゃんは、泣いて喜んでいるかな?私先生になるよ。おじいちゃんは、ようやったって言ってくれているかな?頑張ったよ。とお仏壇の前で手を合わせました。振り返ると祖母が「いつもみんなあやちゃんのことを見てくれている。大丈夫だよ。」と。
 家族が繋がり結んでくれた「いのち」。私は、私の選んだ教職という道で輝かせたい。そう思います。

 鈴木中人さん、玉置先生。このような素晴らしい著書がこの世にあること。感謝でいっぱいです。上手く言葉が出ません。感動という言葉だけで表すには物足りないほど、「いのち」について深く考えさせられました。ありがとうございました。(下野)
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