拙著から紹介【1年間まるっとおまかせ! 中1担任のための学級経営大事典】(明治図書)

画像1
 今回は、「1年間まるっとおまかせ! 中1担任のための学級経営大事典」(明治図書・学年別)から、冒頭の「学級経営成功の5つの秘訣」を紹介します。

 1 「笑顔」を忘れない
 
 「笑顔を忘れないことが、学級経営を成功させるコツなのですか?」と聞かれたことがあります。「笑顔が一番重要です」と、自信をもって答えています。

 生徒の側から、学級担任の姿を考えてみてください。中学校入学当初の生徒に聞くと、「中学校は小学校に比べて恐い感じがする」と答える生徒が多くいます。このような心境の生徒の前に、「笑顔」のない、仏頂面の学級担任がいつもいたら、どのように感じるでしょうか。「失敗したら強く怒られそう」「あまり気軽に質問ができそうにない」など、学級作り当初から、生徒が担任へ距離を置いてしまいます。

 生徒が「温かい感じがする先生だな」「この学級には、安心して居ることができるな」など、生徒がこれから始まる中学校生活をプラスに感じることができるようにするには、学級担任の包み込むような笑顔が大切です。

2 1日に1回は学級に「笑い」を起こす

 「笑いがない授業をした教師は逮捕せよ」
とは、社会科授業名人の故・有田和正先生の名言です。ご自身の中学校時代を振り返ってみてください。みんなで気軽に笑い合える学級は楽しかったのではないでしょうか。有田先生は、楽しい授業作りには、笑いが欠かせないと言っておられるのです。このことは授業だけではなく、学級生活にも同様で、笑いは学級経営を安定させるコツの一つです。もちろん人をさげすむような笑いがあってはいけません。共感の笑いです。

 教師の自己開示が、生徒との距離を縮めると言われます。「先生もこんな失敗するんだ。私と一緒!」と共感すると、生徒は明るく笑います。

「中学生になると、定期テストというものがあります。先生はテスト前に一夜漬けをしたことを思い出します。教科書を開いたまま、いつの間にか、そこに伏せて寝てしまって・・・。気づいたら、ページがよだれでベトベト」

 このような教師の経験談は、自分でもありそうですので、共感できるのです。聞いているだけで楽しいのです。朝や帰りの会、給食の時間などに、担任が何かしら話題提供をして、みんなでわあっと笑い合うことを楽しんでください。笑いの多い学級は、安定した学級の証でもあります。 

3 「良い学級」の具体像を書き出す

 すべての学級担任が「良い学級」を作りたいという思いを持っていることでしょう。ところが「あなたが考える良い学級を具体的に教えてください」というと、曖昧な場合が少なくありません。もちろん、一言で「良い学級」を語ることは難しいことですが、いくつかの具体的なイメージをもっていることが大切です。

 そこで、自分で場面を限定して、「良い学級」のイメージを書き出しておくと良いでしょう。
<授業中>
・ 教師が話し出したら、すっと集中できる学級
・ 発言者の方に自然に顔を向けて聞こうとする学級
・ 「そうか」「わかった」「わからないから教えて」などと素直につぶやくことができ、そのつぶやきを学級全体が大切にする学級
・ 学びから逃げようとしている仲間に声をかけて戻そうとする学級
<学校行事・学年行事>
・ 誰もが学級所属意識をもって行動できる学級
・ うまくいかないときにこそ、学級でそれを乗り越えようという行動が見られる学級
・ 学校や学年の規律を保とうと行動できる学級
・ リーダーやフォロアーとしてどうあるべきかがわかっている学級
 このように具体的場面で、自分が考える「良い学級」の姿を書き出しておきましょう。担任として学級を見つめるポイントが明確ですから、良い点はズバリ褒めることができます。また、改善してほしい点を明確に示すことができますので、学級作りに失敗しません。

4 「判断尺度」を安定させる

 生徒が嫌う学級担任は、その都度、相手によって、判断が変わる担任です。北海道教育大学の横藤雅人先生は、織物を織ることを学級作りに例えて、「縦糸・横糸をしっかり張る」ことが大切だと言われています。しっかりとした縦糸張りは、「判断尺度を安定させる」ということです。特に4月当初は、生徒から聞かれることが多くあります。
「先生、この資料集は学校に置いていっていいですか」
「先生、どうしてあの場所は、1年生は入っていけないのですか」
「先生、中学校では給食の食べ残しはダメなのですか」
など、小学生気分がまだ抜けきれませんので、いろいろと質問してくる生徒がいるでしょう。そうしたときに、「判断尺度」をぶらさず、端的に答えることです。

 一人の生徒に伝えたことは、他の生徒にも伝わります。
「あれっ、私には、先生はそう言わなかったよ」
といったことがいくつか続くと、生徒からの信頼を失うことになります。不安定な学級を    生み出す要因となりますので、要注意です。ちなみに正しい応答にも関わらず、「判断尺度」がぶれるのは、隣の学級や先輩教師を意識しすぎてしまうことがあるからです。「このような返答をしたら、隣の学級とは違ってしまうかな」「先輩教師から、その判断は違っているよと言われてしまうかな」といった迷いが「判断尺度」のぶれにつながります。自分はこの学級の担任なのだ!と自信をもって応答すればよいのです。

5 価値付ける言葉を多用する

 学級担任として、集団のよさを価値付けたり、生徒に望みたいことを示す言葉を多用したりすることが大切です。これらを4月から6月頃にかけて、特に意識して行うことが、学級経営成功のコツの一つです。できるだけ早期に担任が描く学級像を示すことが重要なのです。

 心ある生徒は担任の思いに応えようと行動します。そのような生徒には、担任としての嬉しさを伝えたり、さりげなく褒めたりしましょう。すると、あまり意識していない生徒も徐々に考えて動くようになります。焦ることはありません。右のように掲示物を作り、価値付ける言葉を重ねていくこともよいでしょう。
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30