祖父の話(牧野友)

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 お正月に祖父の家に親戚一同が集まる行事が私の家にはあります。昨年あった出来事や、今年はどんな年にしたいかなどをご飯を食べながらみんなで話します。親戚にはなかなか会えないので私はこの行事が毎年毎年とても楽しみです。

 ご飯を楽しむ中で、 話題は「今年私が教員採用試験を受け、いとこが高校受験、大学受験をすること」になり、祖父は、自身が20代の頃の話をしてくれました。

 祖父は中学校を卒業後、すぐに就職をしました。勤め先は、知り合いの電気屋さん。全く知識のなかった祖父は、事務と電球を売る仕事をしていました。周りには、大学を卒業したエリートと呼ばれる人たちがいて肩身の狭い思いをしていたようです。当時は今と違って電気屋さんが電球を売りに出かけていました。祖父がいつものように電球を各家に売りに行くと、「ちょっとラジオなおしてくれない?」と言われました。電気屋だから引き下がれないと思った祖父は、その家にあった道具を使いラジオをとにかくバラしてみました。なんとなくこれが原因かなと思う部分をなおして組み立ててみるとラジオがなおりました。これは、電球を売るときに必要な力だと感じた祖父は家電をなおす仕事を覚えました。実績をどんどん上げ肩身の狭い思いはいつの間にかなくなっていったそうです。そして、最終的に自分の店を持ちました。

 祖父は話し終わると、「日々何気なく過ごしているのではなく、たくさんのチャンスが転がっていてそれをものにできるかできないかは自分次第だ。」と語りました。確かに、お客さんに「自分にはなおせません。」と言っていれば、祖父は自分の店を持つことなど考えもつかなかったのだろうと思います。私は、この話から教員採用試験に向けてたくさんのことにチャレンジしようと思いました。たくさんの問題と出会い、たくさん子ども達とかかわる機会を増やし、転がっているチャンスを逃さないようにしたいです。自分に後悔がないように努力をしたいと心から思いました。また、このことに気づかせてくれた祖父の存在は、とても大きいなと改めて感じました。

 最後に、祖父は「今、こうして子どもや孫とご飯を食べながら話せていることがとても幸せだ。自分の人生に後悔はなにもないよ。」と笑っていました。私も60年後この言葉が言えるようにこれからも過ごしていこうと思います。(牧野友)
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