素敵な本と出会って (矢崎)

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 こんにちは。五期生の矢崎です。今回は玉置先生にプレゼントしていただいた、志賀内さんの「京都祇園もも吉庵のあまから帖」の感想を書かせていただきます。

 この本は玉置先生が繋いでくださったご縁で志賀内さんが私への直筆のサインを書いてくださった、とても特別な本です。この本はとっても素敵でした。志賀内さんの文章はスッと私の心に心地よく着地していきます。どんどん本の中の世界へ入っていきました。

 この本は京都の祇園を舞台とした小説です。その祇園で元芸妓さんをしていたもも吉さんが一見さんお断りの甘味処「もも吉庵」の女将をしています。その「もも吉庵」に悩みを抱えた人が訪ねてきて、もも吉さん特製の麩もちぜんざいを食べ、気付けば悩みを吐露している、「もも吉庵」はそんな場所なのです。悩める人にもも吉さんは心を解きほぐす言葉をかけていきます。

 もも吉さんの言葉は人として自分はどうあるべきか考えさせられるものばかりでした。

 もも吉さんは「叱るときには『慈眼』が必要だ」と言います。「慈眼」とは簡単に言えば、「思いやり」です。これは当たり前のことかもしれません。でも、私は叱る時は、叱る側の考えや生き方が主体となりがちと思います。「私はこうやって生きてきた、だから大丈夫。」と相手に伝えているのと一緒ではないでしょうか。それはその人への「思いやり」が欠けています。

 しかし、十人、人がいれば十通りの性格があるのと一緒で、人にはそれぞれの人生があります。その人の今までの人生は叱る側の人生とはまるで違います。だからこそ、その人を「思いやる」ことを忘れてはいけないのです。その人の今までの人生を慮ってその人と対話することを忘れてはいけないのだと学びました。

 また、もも吉さんは「頑張る」と「気張る」の違いを教えてくれました。「頑張る」は「我を張る」こと、自分独りよがりのこと。「気張る」は「周りを気遣って張り切る」ということ、周りの人たちを巻き込んで、助けたり助けられたりして、色々な考えを1つにまとめて自分の力を発揮すること。

 この言葉に私はハッとしました。私はつい、自分に何か任されたときに「頑張って」しまいます。周りにもっと頼ってよ、一人でやらないでと言われます。そんな言葉に私はなんて言葉をかけてくるんだろう、信じられないと思っていました。しかし、もも吉さんの言う通り、私は「頑張って」いたのです。だから、これから、私は「気張る」ことを目指したいです。そして、「頑張る」人に「気張る」環境をつくれる人間になりたいと思いました。

 そして、「ふつう」についても考えさせられました。ご飯を食べる前に「いただきます」を言うこと。食べた後に「ごちそうさま」を言うこと。落ちているゴミを拾うこと。
これらは人として普通のことです。でも、つい忙しく生きていると忘れてしまうことばかりです。でも、そういう当たり前のことができる人を人は見ています。人として当たり前のことをできるようにしていきたいと思います。

 「大事な人」についても考えさせられました。毎日一緒にいる家族、友達、恋人についイライラしてしまうことがあります。それはきっと私が心を許しているから、その人のことをよく考えようとしているからでしょう。

 だからこそ、その人と笑い合う時、気付いてはいませんがとっても幸せなのだと思います。でも、情けないことに、そういった感情はその人を失ってから気付くものです。

 でも、この本を読んで、「相手が幸せなら、自分も幸せ」だということに気づかされました。自分が幸せなら、きっとその人も幸せに感じてくれているということです。だから、どれだけその人と幸せになれる瞬間が多くなるかは私の関わり方にあるのだと思い、「大事な人」に誠実でありたいと改めて思わされました。

 最後に、「苦労」について考えさせられました。人生、生きていれば様々な「苦労」があります。

 それは人それぞれです。他人から見て、一見小さな「苦労」だと思われることでも、その人からしてみれば、とてつもなく大きな「苦労」なことだということもあります。そう、「苦労」に大きいもの小さいものないのだと私は思っています。人の「苦労」を自分のはかりで測ることはできないし、してはいけないのだと思っています。

 そして、小説の中で無轍様が言った「神様がときどき人に苦労を与えてくださる。」という言葉に私は覚えがありました。

 母が亡くなった時に祖母が私に言った言葉だったのです。
「かえちゃん、神様は乗り越えれる人にしか苦労を与えないんだよ。」と。 
 私はその言葉を今も心の中で常に座右の銘にしています。小説の登場人物たちが言っていた、「こんな苦労いらん。いやや。」という言葉。痛いほど分かりました。

 でも、なぜなのでしょう。神様はその「苦労」を私たちに与えるのです。その「苦労」を私たちは乗り越えて「財産」にしていかなくてはいけないのです。これから教師をしていく中で、自分自身はもちろん、子どもたちの「苦労」を見るときが多々あると思います。本当に辛い時、人は月並みの言葉では「苦労」に立ち向かえません。「覚悟」がないと無理なのです。その時に、私はこの無轍様や私の祖母のように、その子に「覚悟」を持たせてあげられるような言葉をかけたいです。そのためにこれからも「苦労」と付き合って、「財産」にしてやろうと思います。

 この本でたくさんの「言葉」をいただきました。私にとってこの本と出会えたことは財産です。志賀内さん、玉置先生、素敵な本を本当にありがとうございました。(矢崎)
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