教師の話術(玉置)

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 以下は、以前に、教師の話術について書いた拙稿です。ぜひお読みください。

 「声の調子」と「間」で聴き手を引き付ける

 夏の研修期間となり、全国各地からいただいた講演依頼で奔走している。講演後、よく「話術が素晴らしく、集中してお話をお聞きできました」と言っていただく。有り難いことだ。

 講演では、1時間から2時間ほど、プレゼン資料を見せながらテーマに迫る話をしている。私自身、1時間を超える話を集中して聞くのは、かなりの努力が必要だと思っている。内容が良くても、同じリズムでの話が続いては、聴く側の集中力が途切れやすくなるからだ。

 自分もこれまで多くの講演を聴いてきた。講演では、その方の人柄や熱量を直に感じられるのがいい。しかし、聴き始めは、淡々とした語りがその人らしいのだなと思っていても、同じ調子の話が続くと、眠気に襲われ、いつしか記憶がなくなっていることが、これまで幾度かあった。

 こうした自分の経験から、意識して話すスピードを変化させたり、声の調子を上下させたりしている。また、聴き手の頭の中に、情景が浮かぶように心がけて話している。そして、自分のことをいつも見ていると聴き手に感じてもらえるように、講演中は、できる限り会場全体に視線を配っている。こうした工夫が、冒頭で紹介した私の話術への好評価につながっているようだ。

 「玉置さんは落語の趣味があるので、面白い話ができる」という人がいるが、教育講演では、落語のように笑っていただける話材はなかなかない。しかし、「面白かった」という感想もいただける。これについて、思うことがある。

 昨年までに「教育と笑いの会」を15回開催してきた。この会は、授業名人である野口芳宏先生の話や、人気落語家の桂雀太さんや柳亭小痴楽さんの噺を楽しんでいただき、最後は、教育をテーマに語り合う会だ。

 野口芳宏先生の話が始まると、雀太さんや小痴楽さんは、必ず舞台袖に来て、話にじっと耳を傾けている。プロの落語家が野口先生の語り口から大いに学ぶことがあるというのだ。雀太さんは私にこう言った。「玉置先生、野口先生の話をテキストに起こして読んでも、まったく面白くありません。例えば今日は、『歯が抜けた』というだけの話です。ギャグもないのに、あんなに聴き手を笑わせるのです。

 それは、ここだという時に声を「一調子上げる」ことと、聴き手を集中させて離す絶妙な「間」があるからです。ぜひあの技を盗みたい。身に付けたら落語家としてこんな楽なことはありません。単なる世間話で笑ってもらえるのですから」

 なるほど!と納得した。噺で生業を立てている落語家さえ魅了する野口先生の話術を、私も少しでも身に付けたいと思う。相手に自分の気持ちや大切な事柄を伝えなくてはいけない場面が多々あるはずだ。地域によっては、すでに新学期が始まった。自分の話術を見直し、「一味違う」と言われるようなスタートを切りたい。(玉置)
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