岐阜市への「いのちの本贈呈」記事

画像1
 命の大切さを伝える授業で、現場の教員が抱える悩みに応える本「『いのちの授業』をつくる」が9月に出版された。長女を小児がんで亡くした父親と教育専門家による共著。立場も経験も異なる2人が「いのちの授業をもっと広げたい」と思いを重ね、岐阜市教委に75冊を寄贈した。(稲垣達成)

 著者は、全国の小中学校などで「いのちの授業」を展開している愛知県豊田市のNPO法人いのちをバトンタッチする会代表の鈴木中人(なかと)さん(64)=同市=と、岐阜聖徳学園大教育学部の玉置崇教授(66)。玉置教授が愛知県小牧市の中学校で校長だった八年前、鈴木さんに講演を依頼したのがきっかけで知り合った。

 鈴木さんは、長女景子さんを六歳で失った。3歳で小児がんを発病して以降、すぐそばで闘病生活を見守った経験や命の大切さを伝えようと、2005年にNPOを設立。全国の学校などで講演活動をしている。

 「日々、子どもたちと向き合っている現場の先生の声を聞きたい」。鈴木さんは発刊に向け、講演で知り合った教員らに命の授業に抱く思いを尋ねた。「どう伝えたらいいか分からない」「孤独を感じる子どもが増えていて心配」―。約200人から声が寄せられ、17のQ&Aにまとめた。

 例えば「命は重いテーマに感じ、教えることをちゅうちょしている」。鈴木さんは著書で「立派なこと、あるべき姿を話さなければと構える必要はない」とし、大切にしたい「生きる言葉」を伝えてと助言した。玉置教授は、命の授業は教えることが目的になってはいけないと指摘した上で「子どもたちが命について改めて考える時間になればいい、という気持ちで向かうと楽になる」とつづった。

 9月下旬に岐阜市役所で水川和彦教育長に著書を手渡した鈴木さんは「命の授業を推進するきっかけになれば」と期待し、玉置教授は「こういう本は今までなかった、と好評だ」と紹介。水川教育長は「単なるハウツー本ではなく、命とどう向き合うかを考えさせられる」と語り、市立小中学校と特別支援学校全七十校に配る考えを示した。

 本はさくら社から出版され、四六判、192ページ。税別1600円。
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30