「山田満知子さん講演録」(玉置・小牧中校長時代の2012年7月6日記事)

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 「東海北陸中学校長会研究協議会 愛知大会」2日目のメインは、記念講演でした。講演者は、数々の優秀な選手を育てているフィギュアスケートコーチの山田満知子さんでした。

素直な心が才能を伸ばす!」と題した、対談形式による90分間のお話でした。子育てにも役立つとても有意義なお話でしたので、長くなりますが、ここで紹介します。

<質問> 山田先生が育てられた選手といえば、特に伊藤みどり選手、浅田真央選手、村上佳菜子選手が有名ですが、3人は違いますか。

<回答>
 まったく違いますよ。伊藤みどりは、チビで、ちょいデブで、O脚ですからね。その当時、フィギュアは気品高く、上品なスポーツと言われていましたし、主観的なスポーツですから、日本人にはあわない、日本人は勝てないスポーツと言われていたんです。しかし、みどりがパワーのあるスピード感あふれる滑りで、フィギュアの歴史を塗り替えたのです。
 浅田真央には、妖精、エンジェルと呼んでいます。体も柔らかく、容姿端麗ですし、フィギュアに必要なものを全部持っていた。出会って、世界のチャンピオンになれるなと思いました。みどりは感情をあらわにしますが、真央は違いますね。毎日、判を押すように、きっちり、きっちり練習もできる子ですが、大きな喜びも悲しみも知らないような子です。楽しみ方を知らないタイプですね。打たれても強いタイプで、言うことを聞かないところもある。私たちの世界とは違った世界にいるような子で、すごくいい子ですよ。
 村上佳菜子は、見た通りの明るくて、とても素直な子ですよ。佳菜子だけではないけれど、年齢に比べるとかなり幼い感じです。みんなそうですが、素直にまっすぐ育ってきた感じですね。

<質問> 山田先生が教えるときにモットーとされていることをお教えください。

<回答>
 私はあまりスケートは好きじゃなかったのです。現役は高校を出たときにやめました。時々コーチをする機会があってね。それでも結婚したらやめよう、子どもができたらやめようと思っていたのです。

 それを変えたのは、みどりとの出会いです。コーチには、一流を育てる、つまり強化コーチと、普及させるためのコーチがいますが、私は、実は普及させるコーチを目指してきたのです。簡単にいえば、みんなで楽しくやっていきたい、そのように考えてきたのです。
 ご質問の答えですが、まず自分がきちんとしていることですね。まず自分の心をまっすぐにしていたい、そしてプリティでいたい、そのように考えています。自分がしゃっきとしていて、やる気になっていなければ、いいオーラは出ませんよ。子どもに嘘はつけません。子どもは見抜きますからね。そうそう、履き替えた靴をきちんと並べることもするんですよ。これだけで気分が違ってきますよ。
 そして、まっすぐな心に浮かんだことをそのまま表すのです。いやあ、今のよかったよ〜。凄いじゃないの!と、身ぶり手ぶりたっぷりにね。自分もジャンプしている気持ちになって、やったねえ、よし!という感じでね。そうしないと、私への子どもの「くっつき」が悪くなるのです。それとプラス思考かな。お茶を出してくれただけで、ああ、うれしい!なんて、喜ぶのです。こうして、いいことを見つけて、前向いて歩いていく。人はついてきてくれますよ。先生、愛していると言われたいのです。そのために自分をいつも磨いていなくてはと思います。

<質問>愛知がスケートが強いのは、親を巻き込んでいるからと聞いたことがありますが・・・。

<回答>
 そうなんです。一般的には、親をリンクサイドにはいれません。2階で静かに見ていてくださいよ、ですよ。でも私は、リンクサイドに入ってもらうのです。親はいろいろなことを言いますから大変ですけれどね。あの子の方が○分間、アドバイスが長かったとかね。子どもより、親への注意が多いくらいです。
 子どもへの注意は、言葉遣いからです。「知ってる?はだめです。知っています」ですとかね。親がリンクサイドにいますから、ジャンプを失敗しても、子どもは私を見るより、先に親を見るのですよ。怒られますからね。でもね、家族が興味をもってもらわないといけないのです。家族揃って、スケートファンになってくださいといっています。私も「ねえ、ねえ、どうする?」なんて親に聞くのです。一人で頑張っているより、みんなで頑張ったほうがいいですからね。みんなの力で子どもを育てるということでしょうか。こういう形にしたのは、私が最初だと思います。

<質問>本番で実力を出させるためのコツは何でしょうか。スタート前に何かしら選手につぶやいておられますね。何を話しておられるのですか。

<回答>
 実力を発揮させる言葉があったら、こっちが教えてほしいです。スタート前は、選手も私も動揺していますからね。こっちがそのときにかける言葉を聞きたいくらいです。その子の顔を見ていると、何を言ってやればいいのか、わいてくるといったらいいでしょうか。とっさに出てくる言葉です。
 あらかじめ、私は考えていることはありませんね。こんなにこの子は、頑張ってきたのだから、神様、ちゃんと見守ってやってくださいね。こんな気持ちでいるのです。実力を発揮するのは、やはり練習しかありませんね。自信をもって臨む、これしかありませんね。

 以上です。文責はすべて私(玉置)にあります。それにしてももうすぐ70歳となられるのに、実にエネルギッシュで、若々しい語り。舞台の上で、きらきらと輝いておられました。 

※写真は著名人から学ぶリーダーシップより
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