拙稿「講話に落語話法を取り入れる」(月刊プリンシパルから)

 かつて「月刊プリンシパル」(現在休刊)に「校長の裏ワザ」と題して連載を3年間させていただいていた。今回は、その中から「講話に落語話法を取り入れる」と題して掲載された原稿をお読みいただきたく思います。

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 話術で生業を立てている落語家から学ぶべきことはたくさんあります。今回は、その中から校長講話に取り入れることができるワザを厳選してお伝えします。

 一人芝居を入れて話す

 落語は、登場人物が聞き手の目の前で話しているように思わせる芸です。この手法は講話でも大いに活用できます。

 例えば、地域の方から通学状況がよくないという苦情が届いたことを話すとしましょう。しかし、「先日、地域の方から皆さんが道一杯に広がって歩いていて迷惑だという苦情が届きました」と伝えても、子どもたちの印象にはなかなか残りません。こうしたときに、落語風に一人芝居を入れて話すのです。

 いきなり電話を受けているゼスチャーをして、
「はい、はい、すみません。子どもたちが道一杯に広がって歩いているのですね。それはご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ありません」
 と、頭を何度も下げながら、相手の話を聞いている状況を見せるのです。一瞬にして、会場の空気が変わります。
 少し間を開けて、
「今朝は、このような電話を受けました。とても残念なことです。気を付けてください」
 と静かに言葉を添えて、この話題を終わります。これも落語話法です。多くは語らないことで印象がより強くなります。

 重要なところでは声の調子を上げる

 子どもたちに記憶して欲しい言葉は、その言葉を発するときに、意識して声に張りを持たせ、一調子上げて話すというのも、落語話法の一つです。
 
 例えば「相手の立場になってみることが大切」というフレーズを記憶してほしいときには、講話の中で、
「(高い声を出して強く)相手の立場に(間を開けて、強く発声する気持ちで)なってみる(声を戻して)ことが大切」
 というように、オーバーすぎると思うほど、強弱と間を意識して話すと効果的です。
 
 先に指や視線で注目させてから話す

 落語家のしぐさと言葉に注目していると、しぐさが先にくることが多くあります。ある師匠に尋ねてみると、確かに意識して演じていると言われました。

 具体的に説明しましょう。例えば、来客の目の前においた茶碗を指すしぐさがあります。聞き手にわかるように、指で来客の前を指しながら、「その茶碗」と言いますが、茶碗を指すしぐさを「その茶碗」と言うよりも、一瞬早くしているというのです。

 聞き手の立場で考えてみると、落語家が指で指した方に視線が向かいます。その瞬間に「その茶碗」という言葉が添えられるわけですから、あそこに茶碗があるのだなとはっきりイメージできるわけです。

 これを講話の場合で言えば、先に掲示されている教育目標を指してから、「あの目標」と言った方が伝わりやすいということです。

 コロナ禍もあって、無料でオンライン落語を発信している落語家さんもいます。この機会にぜひ落語から話芸を学んでいただければと思います。
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算数・数学授業づくり講演の感想

 依頼を受けて行った講演「算数・数学授業で主体的・対話的で深い学びを生み出すために」の感想が届きました。有難い感想ばかりです。
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日本教育新聞2021年4月19日号「提言」(玉置)

 この夏は過去の拙稿を時々紹介したいと思います。今回は、日本教育新聞2021年4月19日号で掲載された私の「提言」です。GIGAスクール構想の推進アイデアを提案しています。1年前の記事ですが、色あせていないと思います。

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 一人一台端末稼働が心配となる声

 昨年度の教育界流行語大賞を決めるとしたら、「GIGAスクール構想」が間違いなく上位にくるだろう。「GIGAスクール=一人一台端末+高速回線の配備」は、学校にとってかなりインパクトがあったはずだ。

 文部科学省は、令和三年三月末までに全自治体の97.6%に端末が納品される見込みであると発表した。したがって、学校には子どもたち一人に一台の端末が届き、職員会議では、端末の活用方針や方法などが議題となっていることだろう。

 ところが、この予想を覆す情報が管理職以外の職員から入ってきている。「三月早々に端末が届いているが、そのまま保管庫に入っている。それをいつどうするかの提案はまったくされていない」「校長から、『教育委員会から具体的にどう動くのかという指示があるはずだ。それを待ってから動きましょう』と言われている」「端末が壊れたときのことがはっきりしていない。子どもが端末を破損させたとき、保護者も学校も困るので、修理の決まりが明確になるまで待とうと指示されている」といった声があちこちから聞こえてきている。文部科学省が描いている学校像には、距離がかなりあると言えよう。

 さて、あなたの学校は理想の姿にどれほど近づいてきているだろうか。

 GIGAを恐れない

 私自身、かつて校長であったので、管理職の心情はよくわかる。コロナ禍が続き、教員は常に神経を使っている。その中で、一人一台端末が入ったから、ぜひ授業で端末を使ってほしいというのは、教員にさらに負荷をかけるようで、強く言えない。また、自分がクラウドをメインとした端末活用をしたことがないために、躊躇する気持ちも理解できる。
しかし、端末導入後に、一、二ヶ月も眠らせたままの状態では、教員は端末を活用しなくてもいいという気持ちになるのではないか。

 GIGAスクール構想実現は、「案ずるより生むが易し」だ。まずは動いてみることだ。GIGAは恐れることはない。

 始めに、どの教室でも端末を立ち上げることをするとよい。多額な税金で導入された道具をいつまでも眠らせておいては管理職の見識が疑われる。

 ネットで教科書用語を検索させることから始めたらよい。また、それまでノートに書いていた授業での「ふり返り」をクラウド上の共有シートに入力させたらどうか。授業のたびにキーボード入力する経験は、子どもたちが端末を活用する頻度を必ず増加させる。他の子どもが書き込んだ「ふり返り」を読むことで学び合いになるし、教師も「ふり返り」が一覧でき、クラウドへの情報入力の価値や利便性に気づくだろう。

 校内で火付け役を見つけることも端末活用を日常化するコツである。キャンプファイヤーの火を大きくするのと同じだ。燃えやすい人(火付け役)に、まずは実践を勧めてみると、予想以上に早くに火が広がるものだ。 (玉置)
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ある教頭研修会の感想紹介(玉置)

 この夏、おかげさまで各地で講演をさせていただいています。講演後、感想を送っていただくこともあります。ある教頭会研修会後にいただいた感想のごく一部を紹介します。

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 自ら考え、隣を伝え合うことでよりその問題、ワード、技術等について深く掘りさげ、自分のもの、言葉にできていると前回以上に ストンと自分の中に入っていったように思います。

「人から大事にされること」「人を大事にすること」教頭として一番大切にしなければと、とても心に残りました。コミュニケーションを深める為、できるだけ具体的な話を心がけ、よりよい職員室よりよい学校を校長先生と共につくりたいと思います。

 具体的な話が多く、言葉が短く伝わりやすい。 自分もこのように伝えれば、先生方に伝わるということが実感できました。

 先生方に、自分が伝えたいことを分かりやすく伝える」ことの大切さを改めて考えさせられました。校内の課題がなかなか解決しない時は、先生方にこちらが伝えたい意図がなかなか伝わらず、もどかしい思いをすることもありますがこちらの小さな気づきを言葉にするなど、もっと自分が工夫すべき点があると気づきました。明日から実践してみたいと思います。

 学習指導要領など、自分がわかったつもりになっていたことが 実は具体性をともなっていないことに気づいた。 今後に活用していける話ばかりでした。ありがとうございます。

 職員室のことを思い浮かべながら、きくことができました月曜から、こんなふ うにしていこうということが具体的なお話をきいて、頭に浮かんできました。

 来週から授業参観をしていき、担任の先生や専科の先生に授業の感想を早速伝えたくなりました。人に伝える前に自分の中で落としてから伝えることを改めて教えて頂きました。

 講師先生のお話しくださった内容から学びを得ることができたことはもちろん、玉置先生ならではのお話しのされ方、お人柄等々により元気をいただきました。いろいろなシチュエーションごとに具体的なコミュニケーションのはかり方を示してくださり、とてもイメージしやすかったです。今回の研修を受けて、まず先生の授業を観て、感じる、考える時間を少しでも多く持ちたいと思いました。どうもありがとうございました。学びをしっかり生します。

 先生方や子どもの様子で見えていても伝えていなかったことがたくさんあったな…と自分を振り返りました。学級担任をしてた頃、子どもへの フィードバックはとても意識していたのに、教頭として先生方に同じことはできていなかったので、さっそく明日から心がけていこうと思います。

 経験年数の少ない教員への助言に非常に役立つ内容でした。参考にさせていただき、実践に変えていきます。

 教頭として大切な視点、伝え方を多く学べ、大変勉強になりました。授業を見に行きはしているものの子供や先生の良さやがんばりをすぐに、また、丁寧に伝えられていなかったと気づかされました。日々自分の目の前で仕事のことで精一杯になっていますが、育成の視点をしっかり持って月曜から実践していきます。

 スクールリーダーは、職員に分かりやすい言葉で伝えることが大事だと 思った。そのためには、自分の中でしっかりとイメージを持たないといけない。イメージをしっかり持つためにこれからも学び続けたいと思う。もっと職員とコミュニケーションをとらなければだめだと改めて思いました。
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